猫になって君にキスをして

「タバコ好きだったからの、爺さんは。そのせいで肺ガンで死んだんだがの」


オレの頭を撫でていた婆さんの手が背中に移って、動きは止まった。


「爺さんが逝っちまってから、もうすぐ2年になると」

「にゃ…」(そうか…)

「一人になるとな、結構寂しいもんだぞ」

「にゃ…」(だな…)

「ま、息子も嫁も孫もいるからいいんだがの」

「にゃ」

「やっぱりツレが居なくなるっていうのは、寂しいもんじゃ」

「にゃ…」


止まっていた婆さんの手が再び動き出した。


動物の勘というものだろうか。

皺だらけの婆さんの手から、じんわりと切なげな気が流れ込んでくるのがわかった。


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