猫になって君にキスをして
「もうすぐ冬じゃのぅ」
再び窓の外に流れる景色に目を向けた婆さんは、そう言ってから口をつぐんだ。
オレは、しばらくのあいだ、その横顔を見つめていた。
オレンジ色の光が婆さんの顔を照らし、皺の陰影をくっきりと浮かび上がらせる。
窪んだ目は窓の外へ向けられてはいるが、意識は、景色のそのまた向こうへ飛んでいるように見えた。
「にゃ」
オレはそんな婆さんの膝に手を置いた。
カサリと紙袋を膝の上で持ち直しながら、婆さんは細い目でオレを見下ろした。
「ところでお前はどこに行くと?」
「にゃにゃ」(紗希んとこ)
「そうかい、そうかい」
分かったのか分からないのか、頷いた婆さんは、オレの喉元を優しくなでた。