猫になって君にキスをして
『まもなくー、児玉町ー、児玉町ー』
眠い車掌の声がする。
「あっ」
慌てたギャルがシルバーに光るカバンからミラーを取り出した。
「げ! なんだこれ」
自分の顔に驚いて声をあげ、ティッシュを取り出し黒い涙をゴシゴシとふき取った。
「よし」
ミラーを閉じ、ケータイも閉じたギャルの手がオレの頭を撫でた。
「あたしここで降りるからさ」
「にゃ」(おう)
「どこに行くか分かんないけど、気をつけろよ」
「にゃ」(おう)
ガコンっと電車が止まる。
立ち上がるギャル。
「にゃ」(待て待て)
オレはピンヒールの足元に飛び降りた。
見上げる。
そこにあるTバック。
ま、見納めだし。