猫になって君にキスをして
「にゃにゃ」(オヤジよ)
オレは額からハゲ上がったオヤジの毛深い腕に触れた。
「ん? なんだ猫」
「にゃにゃ」
(オレにも見せてくれ、そのレース)
「なんだ、お前も気になるのか」
「にゃ」(かなり)
「ほれ」
額からハゲ上がったオヤジが、ケータイ画面をオレに向ける。
「おい、佐々木、それじゃオレが見えねーよ」
耳の上、両サイドからハゲ上がったほうのオヤジが、額からハゲ上がったオヤジに文句をつけた。
「にゃにゃにゃ」
オレは額からハゲ上がったオヤジ……佐々木オヤジの膝の上を通り越し、二人の間に腰かけた。
「にゃ」(これなら見えるだろ)
「お、猫、頭いいな」
両サイドからハゲ上がったオヤジがオレを褒める。
「にゃ」
二人のオヤジと猫一匹、シートに腰かけ、ワンセグ見つめる。
どんな光景だ。