猫になって君にキスをして

「にゃにゃ」(オヤジよ)


オレは額からハゲ上がったオヤジの毛深い腕に触れた。


「ん? なんだ猫」

「にゃにゃ」
(オレにも見せてくれ、そのレース)


「なんだ、お前も気になるのか」

「にゃ」(かなり)

「ほれ」


額からハゲ上がったオヤジが、ケータイ画面をオレに向ける。


「おい、佐々木、それじゃオレが見えねーよ」


耳の上、両サイドからハゲ上がったほうのオヤジが、額からハゲ上がったオヤジに文句をつけた。


「にゃにゃにゃ」


オレは額からハゲ上がったオヤジ……佐々木オヤジの膝の上を通り越し、二人の間に腰かけた。


「にゃ」(これなら見えるだろ)

「お、猫、頭いいな」


両サイドからハゲ上がったオヤジがオレを褒める。


「にゃ」


二人のオヤジと猫一匹、シートに腰かけ、ワンセグ見つめる。


どんな光景だ。

< 148 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop