猫になって君にキスをして
とぼとぼと数メートル歩くと、またまたムーディな曲が流れてきた。
『きっと~あたしのため残しておいてね~最後の~踊りだけは~♪~』
ラストダンスは私と……
ああ……、一体ここは、昭和何年目をやっているんだろう。
もしも猫のままいるはめになったとしたら、オレは間違いなくこの町に住むだろう。
ボロ商店の屋根の上に寝転がって、こうして演歌とシャンソンなんかを聴きながら、ぼーっとして一日を過ごすんだろう、きっと。
時折、この商店街を通り、あのちっちゃな駅に向かう紗希の姿を見つけて猫のオレは言うんだ、「にゃにゃ」と。
「……にゃあ」
(はあ……)
何だか……
秋の夕焼けと、この昭和な雰囲気に圧されて寂しくなってきた。
やばい。