猫になって君にキスをして
「じゃ、それ歌ったら終わりね」
紗希がテープをセットする。
「西のぉ~~酒場通りにはぁ~~」
爺さん婆さんの大合唱が始まった。
「長い~~髪の女が似合う~~」
爺さんからマイクを貰った紗希が続ける。
「ちょっと~~お人よしがいい~~くどかれ上手なほうがいい~~」
「……」
オレはカラオケ大会が終わるのをドアの前で座り込んで待つことにした。
「あーー、やっぱりすっきりしたい時は、太川たかしよね!」
「んだ、んだ」
「また来週もやっぺな」
「そうすっぺ」
「んじゃ、またない」
「またない」
どっこらしょと立ち上がる爺さんと婆さんがこちらに向かってくる。
「にゃにゃ」
オレはドア横にそれ、皆が出るのを待った。