猫になって君にキスをして
最後の婆さんのケツを見送った後、ドアから集会所を覗き込んだ。
「久しぶりに歌ったけど、やっぱり太川たかしは最高ね」
鼻歌混じりにテープをケースに収め、四角いカラオケ機械を部屋の隅に「よいしょ」と運んで、紗希は一つ、伸びをした。
「はぁ……。でも、日曜に爺ちゃんたちとカラオケって」
苦笑しながら肩を落としている。
「にゃ…」
(もっと別の予定は作れなかったのか…?)
「昨日は水族館行きそびれたしさ」
「にゃ…」
薄汚れた窓から外の夕日を見ている紗希の横顔が寂しそうに見えた。
「本気で太川たかしに会いに行こうかな」
「……」
他に言うことはないのか。