猫になって君にキスをして
「さて帰ろっかな」
“西の~酒場どおりにはぁ~”と鼻歌を歌いながら、紗希がドアへ近づいてきた。
「にゃ」
なぜだか分からないが、オレは反射的にドアの影に隠れた。
何となく後ろめたい気持ちがあったのかもしれない。
水族館行きをぶち壊し、貴重な若い女の休日を、爺さん婆さんのカラオケ大会に費やさせてしまったのだ。
「あたしももっと演歌勉強しないとな。爺ちゃんたちに教えられない」
「……」
定期的に教えてるのか? 紗希…。
むしろ教えられるのは、お前のほうじゃねーのか?