猫になって君にキスをして
とぼとぼと歩いていくと、山根さん家の前まで来た。
アパートからおよそ200mというところか。
「ウゥーーー…」
塀の向こうから唸り声が聞こえる。
そうだ。忘れてた。
この家には犬がいる。
人間のオレでも怖い、デカいハスキー犬だ。
ブルーにちょんと乗っかった黒い点の瞳が、はっきり言って可愛くない。
この家の前を通るたび、なぜかいつも吠えられる。
紗希と一緒にいても、どういうわけかオレにだけ執拗に吠えまくる。
紗希か……。
そういえば今日は何してるんだろう。
なんて考えた時だった。