猫になって君にキスをして
サンダルがカラコロと鳴る。
紗希はすでに舗装道路を歩きだしていた。
「にゃにゃ」
紗希をたずねて3000里。
言い過ぎだが、やっと紗希にたどり着いたんだ。
しかしオレの心は、まだ、申し訳なさと照れくささに包まれていた。
歩く紗希の後ろ姿を、うずくまったまましばらく眺めた。
5本の牛乳パックが詰め込まれたビニール袋が、点滅する街灯に照らされて揺れている。
ゲブッと一つ、でかいゲップを吐き、「やだー、はずかしい」と一人突っこみをする紗希が次第に遠ざかる。
ガサ……ゴソッ……
草むらの中で、何だか分からない虫が動いた。
「にゃにゃ」
立ち上がったオレは、揺れる草を横目でにらみながら、急いで紗希の後を追った。