猫になって君にキスをして
「ちょっとぉ、猫ちゃん、躊躇するふりしてそれは無いんでないの?」
猛スピードで部屋に上がり込んだオレに呆れながら、後ろ手にドアを閉めている。
「にゃ……」
結果的に部屋に入り込んでしまった。
「その勢いで駆け上がって来れるんなら、ケガも大したことないのね」
赤い前足がケガのせいだと思っている紗希は、ちょっとだけ笑って、冷蔵庫の中に牛乳パックを詰め込んだ。
「あ、そうだ、猫ちゃん、牛乳飲む?」
仕舞い掛けた牛乳パックを1本抜き取って、
「にゃ」(まさか)
「カルシウム再び」
腰に手をかけ、グビグビっと一気。
「ぷはーっ」
「……」
いったいどんだけカルシウム摂取する気なんだ、お前は。