猫になって君にキスをして
「ワン! ワン! ゥゥーッ、ワンッ!!」
「にゃッ!!!」
(ひょえーーっ!)
ぼんやりと塀の前を通り抜けようとしたオレに……、猫になったオレに、
そのハスキーが案の定吠え立てた。
あの可愛くない目を三角にして、キバを剥き出して。
今にも襲いかかってきそうな前傾姿勢だ。
やべぇ。
鎖がピンとはって、切れそうだ。
「にゃー…」
(怖ぇー)
足早にそいつの前を通り過ぎた。
しかし5mほど進んでもまだ吠えている。
「うるせーな! この馬鹿犬!」
家の中で山根さんも吠えていた。