猫になって君にキスをして

「煮物作ってあるんだけど、それでいい?」

「にゃ!」


煮物と聞いて、婆さんの顔を思い出した。


「あたしね、煮物だけは得意なの」


チーンとレンジの音が鳴り、甘じょっぱい香りが漏れる。

ギュルル……と、腹の虫が反応した。


「あら。やっぱりお腹へってるのね」

「にゃ」


婆さん、オレ、紗希の煮物までたどり着いたぜ。


ちゃんと家に帰れたか?


婆さんにも食わせてみてーな、紗希の煮物。


婆さんのも食ってみてーな。


猫アレルギーの孫がいない時に。

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