猫になって君にキスをして
ボーンボーンボーン……
年季の入った振り子時計の音が、せまい部屋に響いた。
「あ、始まっちゃう!」
突然紗希が立ち上がった。
「ド、ド、ドリフの大爆笑~」
「……」
この町は、きっと、時計の針が遅れているのだ。
あるいは止まったままなのか。
「猫ちゃん、8時だよ」
テレビの前でうつ伏せに寝転がり、「よ、長さん!」と声をかける。
パタパタと上げ下げする紗希の足の動きに合わせて、
尻の黄色いクマの表情もまた、笑ったり怒ったり泣いたりを繰り返していた。