猫になって君にキスをして

「あ~、さっぱりしたぁ」


タオルで髪を拭きながら、すっぽんぽんの紗希が戻ってきた。


「あら?」


そのままオレの顔を覗き込む。


「猫ちゃん、目の周り、赤いわよ」

「にゃ?」

「血のついた手でこすったのね」


テレビの脇の鏡を見ると、目の周りをパンダ模様のように赤く染めたオレが写っている。


「にゃ…」


なんだ、この姿は。

ますます切なくなった。


「ふう」


バスタオルを巻いただけのカラダで、紗希はオレの隣に腰掛けた。


「あれ?」


バッグの中から取り出した携帯を見て、首をかしげている。


「あらら、充電するの忘れてた。いつから切れてたんだろ? 聡史からの連絡も無いし……」


「……」


電源が入ってないなら当たり前だろ。

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