猫になって君にキスをして
ぐすぐす……
鼻をすする紗希の目から一粒の涙がこぼれ、ケータイを濡らした。
「猫ちゃんは好きな人いる?」
「……にゃにゃ」(紗希、お前だ)
「そう」
薄く微笑んだ紗希は、オレを抱き上げて膝の上に乗せた。
バスタオルに包まれた紗希の身体は、いつものように温かい。
その柔らかい腹に顔を押し当てて、オレも静かに泣いた。
ボーンボーンボーン……
古時計が10時を告げる。
「何にもすること無いし、寝ようか」
そう言うと紗希は、オレを膝の上から降ろし、そのままベッドに横になった。
「にゃ」(風邪ひくぞ)
脱ぎ捨ててあったTシャツをくわえ、紗希の顔の前まで運んでやると、
「ありがと、猫ちゃん」
カラダを起こした紗希は、それを着て布団に包まった。
オレはその隣りにもぐり込み、石鹸のにおいのする紗希の髪の側で丸まった。