猫になって君にキスをして
「あったかい」
オレを左腕で抱きかかえ、「おやすみ猫ちゃん」と言った紗希は、
側に置いておいたケータイを広げ、「おやすみ、聡史」とつぶやいて静かになった。
「ZZZ……」
3分とたたないうちに紗希の寝息が耳毛を揺らした。
「にゃ…」
涙の跡の残る紗希の頬を右手の肉球で撫で、寝顔を見つめた。
「……もう食べれないよ」
寝ぼける紗希の可愛い寝顔を、しばらくそうして眺めた。
やがて睡魔が襲ってきた。
(おやすみ、紗希)
むにゃむにゃと動く紗希の小さな唇に、鼻先を押し当ててキスをした。
ごめんな、の意味も込めて。
「……そこだ、デンジマン……!」
紗希のマニアックな寝言を耳に入れ、オレも静かに目を閉じた。