猫になって君にキスをして

……聡史? 


何でオレを聡史と呼ぶ?

寝てる間に、名前でもつけたのか?

すっかり飼い猫か。


それにしても聡史って。

猫に聡史って。


オレは床に座り直した。


「にゃっこらせ…と」


ん? 何だ、“にゃっこらせ”って。


「にゃんだ?」


あ? 何だ、“にゃんだ”って。


半分猫で、半分人間のようなセリフが出た口に手を持っていく。

指で唇を撫でる。

ジョリッと髭の感触。


……なんだオレ、バリバリの毛並みだったのが、一晩でジョリジョリになってやがる。


「ちょっと……」


紗希は、まだオレを変な目で見ている。


「にゃんだよ」


つぶやくと、床にぴとっと鼻血が落ちた。


「にゃべ」


振り向いて、鏡で鼻血の状況を確認した。

幸いな事に、片穴からの出血だった。

たいした量じゃない。


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