猫になって君にキスをして
紗希を抱いたままベッドから転がり落ち、ようやく少し落ち着いた。
「いたた……」
「紗希、戻ったんだ、オレ」
「だから何なのよ、訳わかんない」
「猫だったんだよ、オレ」
「は?」
「昨日の猫」
「聡史……あんた、ホントに大丈夫なの?」
「昨日の猫だったんだって。ほら」
オレは薄っすらと赤い両手を紗希に見せた。
「昨日の猫、手、赤かったろ?」
「……うん、赤かった」
もう一度鏡に振り返り、顔をチェックした。
目の周りも薄っすらと赤い。
最悪すぎる格好だが、この際、そんなことどうだっていい。
「目の周りも赤かったろ?」
「こすったみたいだったんだよね。うん……赤かった」
そういえば、しっぽ。
しっぽの先は黒かったはずだ。
オレは剥き出しの自分のケツをチェックした。
尾てい骨あたりに、黒っぽい青アザが出来ている。
記憶を辿る。
……うん、きっとそうだ。
オレが猫になる前、
そう、土曜の朝、オレは紗希にケツに蹴りをくらっている。
その時のアザに違いなかった。