猫になって君にキスをして

塀の上をよたよたと歩いていって、たどり着いたのは公園だった。

アパートからそれほど離れてもいない公園だったが、足を踏み入れるのは初めてだ。


初めての経験が猫になってからとは。

想像もしてなかった。

当然だ。


土の上に腰を降ろし、その敷地をくるりと見渡すと、

ブランコにすべり台、砂場にベンチ、たったそれだけが置いてある小さな公園だった。

周りは緑で囲まれていて、早朝のその場所は静かだった。


しめった砂場の横を通り過ぎ、ベンチの上にジャンプする。

そこで身体を横たえて、「にゃあ(ふう)」と一つ息を吐いた。


かなり疲れる。


< 21 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop