猫になって君にキスをして
「ホントなんだって!」
「……猫?」
「そう、猫!」
「猫……」
「オレは猫だったんだって!」
「猫……」
「そうそう、猫。現にあの猫……薄汚れた白猫、居ないだろ?」
「居ないけど」
「猫って大変なんだぜ、意外と」
オレはまた説明を始めようとした。
が。
「猫猫猫猫って……」
紗希の頬が膨らんできた。
「そんなに猫になりたいんだったらね、」
「あっ」
まずい。
これじゃ、土曜の朝の二の舞―――
「あんたなんかね、猫にでもなっちゃ……」
「あ゛あ゛ーーーっ!!!」
紗希の言葉をさえぎるため、オレは思いっきりキスをした。
もう懲り懲りだ、猫に戻るなんて。
「ふがふが……」
紗希が腕の中で暴れている。
オレはかまわず抱き締めた。
これでもかってくらい抱き締めた。
そして、これでもかってくらいキスの雨を降らせた。