猫になって君にキスをして

「ああ、ごめんごめん、紗希」

「もういい」

「あ?」

「もういいよ」


そうか、もういいのか。

これで安心して寝れる。

ほっとして布団をたくし上げた。


「あんたって人は……」


震える紗希の声がする。


「全然分かってない。優しくない」


……なんだよ。もういいって言ったじゃないか。

仕方無い。なだめてやるか。

でないと後が怖い。


「もう別れる!」


(へ?)


驚いた俺は布団から顔を出した。

まだ泣き顔の紗希がオレを見下ろしてにらでいる。


口がおもいっきりへの字だ。

オレの息子も何となくへの字気味だ。

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