猫になって君にキスをして
5。女計店で堅焼きせんべいを

5。女計店で堅焼きせんべいを
_____




爺さんと別れたオレは、公園の出入り口を左に折れた。


「にゃ」


今、何時だろうか。


太陽の位置を確かめようと空を見上げたけれど無理だった。

まぶし過ぎだ。

今こうして歩いていたってかなりまぶしいのだ。


「にゃにゃー」

(猫って日中、こんなにもまぶしいものなんだな)


ふと気づく。

だから猫はいつも目を閉じてるんじゃないか。


座っていても寝転んでいても、

日中の猫は必ずと言っていいほど目をつむっている。

あれは、このまぶしさが引き起こす現象なんじゃないか?


例えば日中、日向ぼっこをしようと縁側へ出る。

陽射しがまぶしい。

目を閉じる。

温かい。気持ちいい。

そのまま眠ってしまう。


そうだ。きっとそうだ。

猫は眠くて寝てるわけじゃないんだ。

まぶしくて目を閉じた“ついで”に寝てしまうのだ。


おお~。

猫になって初めてわかったこの気持ち。


< 44 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop