猫になって君にキスをして
50mほど進むと、時計店の前に差しかかった。
老舗のおんぼろ時計店だ。
「にゃ」
(まだあったのかここ)
ずいぶん前にたった1回だけ、腕時計の電池交換で入ったことがある。
当時のバイトは宅配業だった。
時間厳守は絶対だ。
腕時計が止まったままじゃ仕事にならない。
他の店が見当たらなくて仕方なく入ったのだが、
入口でかなり躊躇した。
どうしてか?
この店の時計の針は、腕時計から目覚まし時計、壁掛け時計に至るまで、全て別の数字を指している。
時計店なのにだ。
正確な時間はお前のココロが決めろ。
そんな状態だ。