猫になって君にキスをして
あの時となんら変わっていない「女計店」の時計たちは、
相変わらず好き勝手な時間を指している。
「にゃ……」
こりゃ、中の電波時計で確認するしかねぇな。
とにかくオレは時間が知りたいんだ。
自動ドアの前でお座りしてみたが、猫のオレにセンサーは反応しなかった。
ちっ。
何だよ。
小さいからか。
オレが小さいからダメなのか。
「にゃ」
ガラス戸に鼻を押し当てて薄暗い店内をのぞくと、
口をぽかんと開けた店主がレジ横のパイプ椅子に腰かけているのが見えた。
空中のどこか一点を凝視したまま微動だにしない。
大丈夫か。
オレはしばしそこにうずくまって、他の客が来るのを待った。
一緒に中に入るつもりでいた。
が。
1分……3分……5分以上経過。
客が来る気配ゼロ。
参った。