猫になって君にキスをして

「なにかあったかのぅ」


爺さんはそう言うと、スローなまま奥の座敷へ入っていった。


「……」


そのまま3分以上待った。

スローだ。


「こんなもんしかねーけどなぁ」


戻ってきた爺さんの手に握られていたのは堅焼きせんべいだった。


「にゃ……」


せんべいって。

堅焼きって。


まあいい。この際文句は言えない。

キャットフードが出てこなかっただけでも上出来だ。

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