猫になって君にキスをして
「ほれ」
爺さんが差し出す堅焼きせんべいをくわえた。
猫になって初めての食事だ。
緊張する。
うまく食えるだろうか。
「んにゃっ」
犬歯をせんべいに突き立てた。
ううう、くそっ。
思っていた以上に固てぇ。
「……ふが」
せんべいをヨダレが伝う。
噛めない。
噛めないぞ、爺さん。
「なんだ、噛めないのか」
「ふがふがにゃ」
(噛めん。割ってくれ)
「頑張れ、猫」
……ありがとう爺さん。
オレ頑張るよ。