猫になって君にキスをして
床に残ったせんべいの粉を指先でちょんちょんとつついた爺さんは、
それをポケットにしまってからパイプ椅子に腰を下ろし、眼鏡拭きを始めた。
オレは床でその様子を見ていた。
この店主、
電池交換をしてもらった時もこんなにスローだっただろうか。
……いや、あの時はそんなに待った記憶が無い。
何年前だっけ?
紗希と付き合い始めたころだったか?
……ということは3年か。
たったそれだけでこんなにもスローになってしまうものなのだろうか。