猫になって君にキスをして
1時ごろ、開いた自動ドアから人が入ってきた。
「郵便でーす」
郵便屋だ。
爺さんがゆっくりと手紙を受け取る。
ダイレクトメールばかりのビニール包みの束だ。
「ご苦労さまだねぇ」
「どーもでーす」
肩にぶら下げたカバンをぶんっと振ると、郵便屋は出入り口へ走っていった。
「にゃ!」
あわててその後を追った。
ぎぎぐ……がっとドアが開く。
脱出成功。
ほっとしながら後ろを振り返ると、爺さんがこちらを見ていた。
閉まりかけたドアの向こうで、スローな爺さんの口が動いた。
「また来いよ、猫」
オレは閉まったドアに肉球を押し当てた。
「にゃにゃにゃ」
また来るぞ、爺さん。