猫になって君にキスをして

「まいど!」


声を上げた店主は、婆さんの杖代わりとなっている大根を注意深く取り上げて、

軒先にあったジャガイモのカゴをひょいとつかむと、レジまで戻っていった。


その様子をじっと見ていたオレに気づいた婆さんが、目を細め、オレの頭を撫で始めた。


「にゃ…(近けぇ)」


腰の曲がった婆さんの顔は、恐ろしいほど近くにある。


笑う婆さんの前歯2本はキレイに金色だった。


目がくらむ。

まぶしい。ある意味太陽より。


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