猫になって君にキスをして


「はいよ、婆ちゃん。450円だ」


店主がビニール袋をぶら下げて戻ってきた。


「あいよ」


巾着袋から財布を取り出す婆さんの手がオレの頭から離れる。


「にゃっ」


た……助かった。


その隙に婆さんの側から離れ、1mほど距離を置いた。



「孫が好きだからな」


婆さんが再びオレを見てニカリと笑う。


いや、その前にさっきまでオレのいた場所にニカリと笑ってから、そこに居ないオレに気づき、目だけをキョロキョロと彷徨わせてから、1m先のオレに気づいて笑いかけてきた。


婆さんの右手が空を舞っている。


おそらくオレの頭を探しているのだろうが、

申し訳ないが婆さん、

オレ、あの重みには耐えれないよ。


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