猫になって君にキスをして
「お前も来るか?」
ガマ口財布におつりを収めた婆さんがもう一度オレを見た。
「にゃ」
(煮物か……)
はっきり言って食いたい。
堅焼きせんべい以外のものを。
「にゃにゃ」
(食いたい)
「そうかそうか」
……この婆さんも猫語が分かるのか?
「でもな、うちの孫、猫アレルギーなんだわ」
そんなオチか!
「すまんのう。今度またここさ来い。作って持ってきてやるさかい」
だから婆さん、一体どこの出身なんだ。
「そのときはツレでも連れてこい」
「……にゃ」
(……ツレ)
紗希。
連れてこれるだろうか。
オレは猫だ。
っていうか、すでにフラれている。