猫になって君にキスをして
「にゃ~…」
「はぁ……」
男とオレは同時にため息をついた。
「今すごい顔だったけど、オレ……フラれたって事かな」
男が話しかけてくる。
「にゃにゃ(そうじゃねぇけどな)」
「分かんねーな、女って」
「にゃ(これで良かったんだよ)」
オレはしゃがみ込んだ男のジーンズに肉球を乗せ、うなずいた。
「次の恋でも探すか」
「にゃ(そうしろ)」
小躍りして喜んでいた紗希の姿が浮かんだ。
「にゃ……」
(悪かったなぁ。巨乳の花で喜ばせちまって)
小躍りしても揺れない紗希の胸のほうが何倍も可愛く思えた。
男とオレは、赤レンガの道をしばらく一緒に歩いた。
途中、キレイなお姉さんとすれ違った。
男は振り向いてまでも、目で追っていた。
そのまま10歩歩いた後、本当に追って行ってしまった。
なんだよ。助けて損したぜ。
その男のジーンズを見送り、オレはまた歩き始めた。