猫になって君にキスをして

「にゃー……」


ため息をついていると、どこからか男の泣き声が聞こえてきた。


「ちくしょー! あーん!」


……あーんって。

オレはその方向へ頭を向けた。

今にも崩れ落ちそうなラーメン屋のカウンターに、男の背中が見えた。


「にゃ?」
(ん?)


なんとなく、見覚えのある猫背な背中だ。

なんとなく、見覚えのあるTシャツだ。


「んにゃ」


間違いない。


背中に「愛は勝つ」とデカデカとプリントされた白Tシャツを着て歩ける人間なんて、アイツしかいない。


真治だ。


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