猫になって君にキスをして
オレはもう一度、真治のTシャツに触れた。
ついでだったので、肉球についたガムのベトベトもそこでぬぐってやった。
いくらかさっぱりした。
「……ん?」
ようやく気づいた真治が顔を上げた。
「にゃ…」
(なんだよ、その顔)
顔を上げた真治のツラは、酷いものだった。
涙で濡れたまぶたは膨れ上がり、
鼻水が鼻から口にかけてビロンと糸を引き、
カウンターに押し付けていた額には、ギトギトと脂がテカッている。
「にゃ…にゃ…」
最悪だぞ。真治。
なんで泣いているのかはわからないが、
同情を越えて、笑えるぞ。その顔は。