猫になって君にキスをして

オレはもう一度、真治のTシャツに触れた。

ついでだったので、肉球についたガムのベトベトもそこでぬぐってやった。

いくらかさっぱりした。


「……ん?」


ようやく気づいた真治が顔を上げた。


「にゃ…」
(なんだよ、その顔)


顔を上げた真治のツラは、酷いものだった。

涙で濡れたまぶたは膨れ上がり、

鼻水が鼻から口にかけてビロンと糸を引き、

カウンターに押し付けていた額には、ギトギトと脂がテカッている。


「にゃ…にゃ…」


最悪だぞ。真治。

なんで泣いているのかはわからないが、

同情を越えて、笑えるぞ。その顔は。

< 99 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop