愛しいわがまま。



―――…

「お客さん、着きましたよ~」

「お釣りいいですからっ!!」


今の私には、笑顔を向けてくれる運転手に
微笑み返すこともお礼を言う余裕もない。

一万円札を渡してタクシーを飛び出した。



遥の家は鍵が掛かっていた。

馬鹿みたいにチャイムを連打する私。



遥……ただの寝坊でしょ?

私、怒らないから。

絶対怒ったりしないから
無事でいて。



「はあーい」

中からお母さんの声。


「あら凌ちゃん♪どうかしたの?」

「遥は…いますか?」


「遥…?朝から出かけたみたいだけど。
私はてっきり凌ちゃんと一緒だと思ってたわ?」


「……そう…ですか。
失礼しました。」


お母さんは不思議そうに
家の中へ戻っていった。



朝からいなくて家に何も連絡がないなら
事故にあったわけじゃないのかな。

……遥はどこに居るの?





―――〜〜♪♪


こんなときに……電話。



"公衆電話"



――……誰?



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