六年一組、本紛失事件
 高基教諭はチャイムと共に現れた。顔はにやけていた。

「先生!」

 木村が高基教諭に質問があるとは思えないので、好印象をあたえる策略でもあるのかと思ってしまう。

「何だ。木村?」

「何かいいことでもあったんですか?」

「いや別に」

「いつもよりも、微笑みがあったんで」

「気のせいだ」

 高基教諭は急に真顔になった。

「セイダ、セイダ、セイダ」

 いきなり古田は言った。もちろん教室内は静まり返った。
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