六年一組、本紛失事件
 生徒たちは古田に無視した。高基教諭の注意もなかったのである。

 二時間目の授業は算数であった。

 生徒たちは教科書を開いた。

「先生!」

 慶子が高基教諭の質問がないのに手を上げた。高基教諭も構えていなかっただけに、少し面をくらったようだ。口が半開きのまま慶子を見つめていた。

「何だ!」

 高基教諭は我に返って聞いた。

「美田さん、算数の宿題をやってきてないみたいなんですけど……その上に人のを写しているんですけど。いいんですか?」

「そうか。で、どうなんだ美田?」

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