六年一組、本紛失事件
「どうだね、今度、クラシックのコンサートにでも行かないかい?」

 波教頭はギロっとした目で藤美教諭を見つめた。誰が見ても下心丸見えだ。

「わあ、本当ですか?」
 
 藤美教諭は波教頭に甘えるように言った。

「何が好きか? 可能なら何でもチケットを取ってあげるよ」

「私は教頭先生と一緒なら何でもいいですよ」

「あ、あの~」

 田脳がなぜか音楽室に入ってきた。

「何だね! 君はいったい! どういうことだね!」

 波教頭もいいムードを邪魔されて、ゆるんだ表情が一気に険しくなった。
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