六年一組、本紛失事件
10 ひとみの心配ごと
 今日の授業も終わった。

 高基教諭は職員室で安堵していた。視界には波教頭がニコニコとしていた。何かいいことがあったようだ。

 高基教諭は一つだけ気になったことがあった。ひとみである。田脳のことが済んだことのように落ち着いている。このままで大丈夫かもしれない。親に言っていなければ事件にもならないはずだ。

「高基先生!」

 藤美教諭が声をかけてきた。

 急なことで。高基教諭は驚いて一瞬、声が出なかった。

「あっ、藤美先生どうしたんですか?」

「怖い顔していたから、どうしたのかなって思って」

「ちょっと考えごとをしていましたから」
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