六年一組、本紛失事件
「なくなったみたい……」

 ひとみはバツが悪そうに、下を向いたままだった。

「なくなった? あれ、昨日は絶対大丈夫って言ってなかったけ?」

「言いましたけど……」

「けど?」

「ちゃんと、ランドセルにしまいました。だから盗んだ人がいけないんです」

 ひとみは逆ギレした。

「ほう、そうかい。じゃ、泥棒やろう、返しやがれ! あの本はお前らのレベルでは難しすぎて、理解できないぞ!」

 理々は生徒たちを疑うように首を左右に動かし、あやしい者をうかがっている。


< 127 / 302 >

この作品をシェア

pagetop