六年一組、本紛失事件
「スープはあったか?」

 笈滝の心配より、おかわりがあるか気になった高蔵だった。

「ありました」

 笈滝は勝ち誇ったように言った。

「よくやった」

 高蔵の褒め言葉に笈滝は満面の笑みだったが、汗がポタポタと落ちていた。

「ツトム! 汗がスープに入るだろ!」

 高蔵は怒鳴ったので、笈滝は容器を給食台に乗せた。

 給食室にはいつもスープ類などは多少の残りがある。早くきた生徒に分け与えるのだ。今日は笈滝の勝利で終わった。少しでも遅いとおかわりはなくなる。たくさん食べたい生徒はおかわりがないとがっかりするのだ。そんな過酷な競争に勝った笈滝は誇るのも当然である。
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