六年一組、本紛失事件
「感謝しているなら残さず食べろ!」

 笈滝は気持ち悪くなった。ゴミを食べることなどできないからだ。じっとスープを見ていた。

「何だよ、じっと見てたってスープ減らないぞ!」

 馬屋の言う通りである。

「先生!」

 泣きそうな笈滝を見てアリスは我慢できなかったのだろう。

「どうした美田?」

「笈滝君、もう限界のようです。給食を残してもいいんじゃないですか?」

「駄目だ」

「どうしてですか?」

「さっき言っただろう」
< 137 / 302 >

この作品をシェア

pagetop