六年一組、本紛失事件
「そうですか、そう見えませんが……うまくあしらっているように見えたんですが」

「そう見えますか?」

 藤美教諭は顔を上げて、高基教諭をじっと見た。

「見えます」

「でも、本当はかなり辛いんです。お願いがあるんです」

「何でしょ?」

「いや、やっぱりやめておきます。ご迷惑かと思いまして……」

「そこまで言って、迷惑なんて、はっきり言ってください。できることならやりますから」

「でも……」

「藤美先生。大丈夫です。さあ、言ってごらんなさい」
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