六年一組、本紛失事件
「あの……」

 笈滝は緊張している。言葉が出てこないのである。

「だから、何よ!」

 玲は笈滝が嫌いなので、早く帰ってほしいと思っている。だから言葉がきつくなるのだ。

「本をサガしていまして……」

 笈滝は言いたいことがうまく言えず、ため息を吐いた。

「本って?」

「理々君の本です」

「ああ! 見つかったの?」

「いや、それがまだです」

「でも、何で笈滝君がさがしているの? 確か子吉沢君が先生に言われたんじゃなかったけ?」
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