六年一組、本紛失事件
「待った!」

 高蔵は言ったが、笈滝はチャイムを押した。

「何だよ! 待てよ!」

 高蔵は笈滝のお尻を右足で蹴った。ボカッと音が響いた。

「痛っ!」

 笈滝は小声を発した。高蔵のストレス発散だ。

 ドアは開き、高校生の男が出てきた。華子の兄であろう。

「塙さん、居ますか?」

 高蔵は笈滝を押しのけ、慇懃に言った。

「あっ、妹ね」

 と、言って一旦、ドアは閉まった。
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