六年一組、本紛失事件
「盗んだな」

 高蔵は信田を犯人にしたいようだ。いや、もう疲れたので探偵ごっこは強引に終わりにしたいようだ。

「ちょっと、待ってよ、犯人じゃないよ」

 信田は両手を素早く左右に振り、否定した。

「その慌て振りはあやしいな」

 高蔵はじっと信田を見た。

「そ、そんなことはないです。理々君の本なんか知りません」

「どうして、そう言える?」

「理々君の本に興味ないし、それに、難しい本にも興味ないし、好きなのはアイドルです……」

「そんなに好きか?」

「はい、将来は結婚します」
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