六年一組、本紛失事件
27 我慢の限界
 八号棟に四人はきた。

 エレベーターには乗る必要はなかった。目的地が一階だからだ。廊下を歩いていた。すぐに『荒屋』と書かれた表札が目に入った。

「ここです」

 と、馬屋は言って、チャイムを押した。

 しばらくしても反応はなかったので、再び、チャイムを押した。

「いないんじゃないの?」

 と、子吉沢は言った。

「いない。次だ!」

 高蔵が言うと、ドアが並んでいる三戸隣の『新田』と書いてある表札の前まできた。

 馬屋はチャイムを押した。

 すぐにドアは開けられた。新田が顔を出した。
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