六年一組、本紛失事件
「違います」

 新田は言った。

「まあ、お前らが理々の本を盗むわけないか。ゆるしてあげるか!」

 新田も荒屋も黙ったままだった。

「何だお前ら! せっかくリーダーが容疑者から外してくれてんのに、感謝がないのかよ!」

 馬屋は弱い者には強気である。

「あ、ありがとうございます」

 荒屋は言った。

「そんなんじゃ、駄目だ! リーダーに対して誠意が感じられないよ!」

 馬屋は数日前にひとみに言われたことを思い出したかのように、荒屋に言った。
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