六年一組、本紛失事件
28 高基教諭対教頭
 高基教諭は職員室の机で座っていたが、落ち着きはなかった。田脳が行動を実行できたのかは定かではないし、気の弱さから、何もできなかった可能性もある。

 職員室のドアは開き、波教頭が入ってきた。

「高基君!」

 波教頭にいきなり呼び出され、高基教諭は田脳が何かしでかしたと思った。口調が刺々しいので、藤美教諭を邪魔するのに成功したのだろう。ならば怒られるのは、たいしたことではない。作戦は成功だ。

「はい……」

 高基教諭は下を向いて、波教頭にばれないように微笑んだ。

「ちょっと、校長室にきなさい!」

 波教頭は校長室に入っていった。

 高基教諭が立ち上がると、ちょうど、藤美教諭が職員室に入ってきた。
< 217 / 302 >

この作品をシェア

pagetop